江戸のメディア王として、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。盲目の大富豪、鳥山検校を演じるのが市原隼人さんです。幕府の許可を得て高利貸しを営み、莫大な資産を築いた人物。洞察力が鋭く、相手の心を見透かしているような言動で登場する度に視聴者に強烈なインパクトを残しました。花魁の瀬川(後の瀬以)を身請けしたものの、蔦重を思う瀬川の本心に気づき葛藤します。幕府からの手入れが入ったことで、4月6日放送の第14回「蔦重瀬川夫婦道中」では瀬川を離縁しました。難役に挑んだ市原さんは「迷いながら演じてきました。一生忘れられない役です」と語りました。
視覚障害者を取材
大河ドラマの出演は3回目。毎回、オファーをお受けした役の資料を読ませていただいたり、血がつながっている方に会いにいかせていただくのですが、鳥山検校は資料も少なく、謎に包まれていてとても難しかったです。私が演じることで、鳥山検校という人物を知っていただくきっかけになればありがたいなという気持ちでした。
検校の役を掴むために、視覚障害者の方の生活を支援する施設(東京視覚障害者生活支援センター)に伺って、実際に目が見えない方や支援される方のお話を伺いました。印象的だったのが、「今度結婚される」という方のお言葉です。「相手のお顔を見たことはないけれどすごく素敵な方」とお話しされていました。「形あるものはいつか壊れるかもしれない。でも、形がないものはいつまでも自分のなかで壊れずに大切にしていける」という新たな思いを見出すことができました。
また、純度100%の暗闇を体験できるイベントにも参加し、目の見えない方が私が今まで感じたこともない世界で孤独と寄り添っていることに気づきました。誰かが相槌や返事をしてくれないと、だれもいないのと同じ。声を聴こうとしたり、風を感じようとしたり、自分から何かを得ようとしないと何もないに等しいと感じました。
検校もその痛みがわかるからこそ、逆に相手の隙に入ることもできる。それはいい方向に向かうこともできれば、悪事にも使うことができてしまうのが恐ろしいです。