デジタル化の危険性

ただ、デジタル化の危険性というのもあるんですね。

判例というのも、具体的な事件の結果なのです。だから、具体的事件のいろいろな要素を取り込んだ結果、その判決が出たのです。いろいろな要素を知るためには判決理由に出ている細かな事実を読んでみないとわかりません。

『裁判官の正体-最高裁の圧力、人事、報酬、言えない本音』(著:井上薫/中央公論新社)

たとえば同じ殺人罪といっても千差万別。刑も一番重ければ死刑だし、軽い場合には懲役刑の執行猶予になったりという例もありました。なぜ同じ殺人罪でそんなに刑に違いがあるんだろうかと疑い、具体的な細かな事情を確認しながら判決理由を読まなければ、コトの本質はわからないのです。単に殺人罪でこういう刑が出たというだけではダメ。となると結構細かな事情が必要なのです。

ところがデジタル化が進んでしまうと、細かな事情は省略されてしまい、骨というか肝心と思われる部分だけをキーワードとして使い検索が終わっちゃったというふうになってしまうと、大きな危険があるんです。特殊な事情があったからこそその判決が出たという、そういう具体的な事情が読まれなくなるという危険があります。