『こども六法』著:山崎聡一郎

法律はみんなを守るためにあるのか

法律の条文には小難しい印象があります。法に縛られるという言葉もあるように、法は面倒と感じている人も多いかもしれません。

しかし、「法令、命令の『令』は本来、善を意味する」と、新元号・令和の考案者とされている国文学者・中西進さんが語るように、法令は、本来いい命令で、私たちの暮らしを守るものです。

令和元年夏、「いじめ、虐待に悩んでいるきみへ」向けて出版された本書は、「法律はみんなを守るためにある」と高らかに宣言。法の趣旨を、伊藤ハムスターさんの絵もまじえ、明快に解説しています。

たとえば、いじめが起きた時、よく加害者は「悪ふざけだった」と言いますね。でも、そんな弁明は認められません。いじめ防止対策推進法では「被害者が嫌だと思ったらいじめ」になります。

さらに大人にはいじめからこどもを救う義務があることなど、保護者側の対応策も明記。「いじめという〈犯罪〉を『こども六法』でなくしたい」との思いがよく伝わってきます。すでに50万部を突破しました。

本書は、罪の意識がないまま法を犯す人こそ読むといいでしょう。泥棒をみんなでやっつけて何が悪いんだ。そう思われるかもしれませんが、これは憲法31条で認められておらず、お仕置きは国にしかできません。「こいつムカツク! 『死ね』って送っちゃおうぜ」とみんなでLINEするのは、刑法202条の自殺関与罪になる可能性もあります。

ここまで書いて暗然としました。有名企業の上司が新入社員に「死ね」と言ったとか、教師が悪ふざけで集団いじめをしたという報道が令和になってからも相次ぐからです。大人の幼児化、こども化とでもいうのでしょうか。本書は、大人も必読です。

『こども六法』
著◎山崎聡一郎
絵◎伊藤ハムスター
弘文堂 1200円