「自分の腸を疑う」ための重要な目安

どういうことかと言いますと、漢方薬を構成している生薬のいくつかは、それぞれ特定の腸内細菌に分解されてから体内に吸収され、薬効を発揮します。したがって、腸内環境が乱れていると、漢方薬の本来の薬効が得られなかったり、薬効が得られるまでに時間がかかったりすることが考えられるのです。

ちなみに、芍薬甘草湯がこむら返りに対して“いつでもクスリ”なのは、多くの薬効成分が腸内細菌を介さずに直接吸収されるからだと推測されます。

(写真提供:Photo AC)

いずれにしても、漢方薬をうまく分解できないような腸内環境は、あらゆる病気を誘発する温床と言っても過言ではありません。腸は脳に匹敵する「人体の司令塔」とも言われるほど、私たちの体と心の健康、さらには思考法に至るまで、大きな影響を与える存在であることが、近年の研究で次々と明らかになっているからです。

ですから、漢方薬の効果が得られなかったり、効果が出るまでに時間がかかったりすることは、クスリとして否定すべきものではなく、むしろ「自分の腸を疑う」ための重要な目安となり得ます。そして、あきらめずに漢方薬を飲み続けていると、腸内環境が少しずつ回復することで薬効成分の吸収が高まり、遅れて効果が表れてくると考えられます。