イラスト:遠藤舞
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「トホホである」。インスタグラムにある番組についてのDMが届いたスーさん。「ジェーン・スーが想定より広がりすぎた」と思った理由は――

トホホである

先日のこと。インスタグラムに、こんなDMが届いた。「大好きな番組だったのに、政治的発言やめてほしいです。オーバーザサンじゃないところで言ってくれるとありがたいです。切実なお願いです。よろしくお願いいたします」

堀井美香さんとやっているポッドキャスト番組『OVER THE SUN』に対する、見知らぬ人からの依頼とも懇願ともとれる内容に面喰らい、えも言われぬ不快感が込み上げ、その正体を即座に因数分解し、躊躇なくアカウントをブロックした。生憎、私はそういう交渉が有効な相手ではない。

そもそも、当番組で党派性の強い主張をしたり、現政権を強い言葉で批判したりは一切やっていない。やりたくなったらやるかもしれないけれど、現時点ではその欲求は堀井さんにも私にもない。

生活が政治と密接に関連しているという点では、広義の政治の話はしている、と捉えられる可能性はある。ま、日常レベルのくだらない話も緩やかに社会の話と繋がっているというだけの話なのだけれど。でも、今回は恐らく違う。

この人は私が「リベラル」という言葉を使ったから、政治の話とジャッジしたと推測される。それ以外に思い当たる節がない。YouTubeか何かで、『OVER THE SUN』がリベラルな番組だと言われていたよと人づてに聞き、そういう解釈もあるのかと談笑したあとに収録した回の翌日に届いたDMだったから。確か私は、「リベラルっていうか、選択肢が複数ある社会がいいよね」というようなことを言った。DM主のアイコンはお子さんを抱いた若い女性で、これがご本人なら、選択肢の少ない社会で子どもを育てたいのかよと、少し荒ぶった。

私だって、政治に限らず対話にならない主義主張を押し付けてくる話は好きではない。信じるものが異なる相手と話が続かない世の中はまっぴらごめん。残念ながら、現状はそうなっているけれど。