管理組合の6割でトラブル
東京地裁は24年10月の判決で、男性の言動が妄想性障害などに基づくと推認した。粗暴さは収まっていないとして「今後、他の住人と円滑な共同生活を送ることは困難と言わざるを得ない」と指摘。10年以上に及ぶ男性の行為は住人側の受忍限度を明らかに超えるとして競売開始を認めた。
マンションの住民は同じ空間を共有するいわば運命共同体だ。それだけにトラブルも生じやすい。国土交通省が同年6月に公表した調査で、全国の管理組合の6割が「居住者間の行為やマナー」を巡るトラブルが発生したと回答した。要因は「生活音」が44%で最も多く、「違法駐車」(18%)と「ペット飼育」(14%)が続いた。
本来なら住民間の話し合いや譲歩で共存を目指すのが望ましいが、生活の基盤となる住居で起きた問題は、そうやすやすと妥協できるものではない。
本人尋問で法廷に立った理事長は「妄想性障害に寄り添うことで問題行動を抑えることを検討したか」と男性側の弁護士に質問され「ありません」と切り捨てた。「住人に理由もなく怒声をあげるんですよ? そういう人に配慮うんぬんなんて、できるわけないでしょう」