“真犯人”は明らかにならず

近隣同士仲良く和気あいあいとできるようにという願いを込めてお話しします─。「猫好きのおばさん」による可能性を挙げた男性は、陳述書の冒頭にその一文を記していた。

その思いも手伝ったのか、女性側は控訴せずに一審判決を受け入れ、法廷での争いは長引かずに終結した。不和を引き起こした被害の真相は明らかにならなかった。

<『まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』より>

プライバシーを侵すカメラは取り外されたが、他人をいぶかる人間の目はレンズよりも厄介だ。夫婦や女性が居を構える一角の住人らは疑心暗鬼を乗り越え、平穏な日常を取り戻すことができただろうか。

※本稿は、『まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』(日経BP)の一部を再編集したものです。


まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』(著:日本経済新聞「揺れた天秤」取材班/日経BP)

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