孤独と狂気を表現

第16回は、源内の孤独と葛藤に焦点を当てた、源内が主役ともいえるような回だった。

将軍の長男・徳川家基殺害事件を調べていた源内と田沼。だが、事件の重要な手掛かりとなる手袋はなくなり、幕府の重鎮・松平武元も死去。意次は源内に調査の中止を伝えるが、2人は決裂してしまう。

エレキテルの失敗もあり、「イカサマ師」扱いされるようになった源内は長屋から追われ、大工の久五郎の紹介で「不吉の家」と呼ばれる屋敷に引っ越す。ある晩、源内は丈右衛門と名乗る侍と、久五郎と酒を酌み交わす。久五郎から甘いたばこの入ったきせるを勧められた源内には、自分を非難する幻聴が聞こえてくる。「イカサマ」とののしる声を振り払うように、時に涙を流し、目を見開き、屋敷内をさまよう源内。軽妙洒脱な人物が心の内側に抱えた孤独と狂気を表現する安田の演技は圧巻だった。

「源内の最期ということで特に大事にした回です。蔦重が耕書堂を始めてこれから新たに日本橋に出ていく上でも源内という人が与えた影響はとても大きい。源内のラストが蔦重の今後にどう影響を与えていくのかを意識しました」

狂気に満ちた様子で屋敷の中をさまよう源内のシーンには4分近くもの時間を割いた。

「不吉の屋敷のセットをフル活用して、安田さんには全部屋、廊下、庭も動いていただきました。源内が追い込まれているという強弱を見せたかったし、孤独も表現したかった。ネタバレになりますが、(手袋による殺人事件の)問題の本質に近寄るほど人は死んでいくという構造が忍び寄っていた。安田さんのお芝居の時間を長くとったことによって源内のキャラクターが現実的になったと思います」