田沼との和解で…

丈右衛門は源内を後ろから襲い、さらに久五郎を刺殺。源内が目を覚ますと傍には久五郎の死体があった。殺人の疑いをかけられた源内は投獄されてしまう。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

源内が捕らわれたことを知った田沼は牢を訪れ、傷ついた源内に優しく声をかけた。格子の向こうから源内に手を伸ばし、その手を固く握り頭をなでた。

「台本のト書きには『触れる』というのは書いてありました。牢を強引に開けるか、開けないかも含めて渡辺さんと安田さんと相談しました。私としては牢は開けたくない。そこでどう触るか、源内に対する意次の思いをどう表現するのか、そこにすがるしかない源内をどうしたら表現できるか考えました」

今作での田沼と源内は先進的な考えでともに国の未来を夢見てきた。田沼から言葉をかけられた源内は子供のように泣きじゃくった。

「安田さんとも話しましたが、いちばん大事なのは意次に触れられたことによってかつての源内が戻ること。彼の生きる目標は意次の信頼であり、意次のためだという部分がある。そこを取り戻したいというのが森下さんの台本でした。田沼に触れられる部分の演技は、安田さんはなされるがままという感じでしたね」

田沼の面会から時がたち、牢にいる源内がパラパラと降る雪を見ながら、辞世の句を詠む。白湯が差し入れられたことに源内が気づいたところで場面が変わる。

「源内がもとの顔に戻っているということが重要です。裏設定ですが意次と会ってからひと月くらい経っています。白湯は毒入りなのか毒入りじゃないのかわからない設定です。視聴者がどう捉えるかで物語が膨らんでいくことが大事だと考えています」