気が付けば未亡人だらけ
未亡人会の最高齢、87歳の辰子(たつこ)は、亡夫を追悼する句集を編んでいる、という設定です。となると、文中に出す俳句を用意しなくてはなりません。亡き伴侶を詠んだ数多の句にあたったものの、ピンとくる作品がない。
プロが作っても、個人の深い悲嘆や孤独という感情は芸術にはなりにくい、としみじみ思いました。というわけで、辰子や美土里たちの句はすべて、楽しんで作った私の素人俳句です。
執筆にあたって、あらゆる分野で勉強の日々でした。仏壇のロウソクの火から燃焼という現象について考え、物理の先生に伺うと、もっとも遅い「燃焼」は、「呼吸」なのだそう。生きるために酸素を吸って、二酸化炭素を吐いているはずなのに、体はそれによってゆっくりと錆びていく。老化ですね。
また、人が地獄へ落ちる絵を見て、ふと深さが気になって調べると、落下まで2000年以上かかるのだとか(笑)。そのほか、お経を調べ、樹木葬を調べて。私がしていたのは結局、「亡き夫探し」だったのです。
気がつけば、私の周りも未亡人だらけ。わが家には近くに住む娘夫婦や弟たちがしょっちゅう顔を出してくれるので、ひとり暮らしの寂しさはありません。そして、最近はしゃくりあげるように泣くのが止んだことにも気がつきました。
友人たちに比べて早く立ち直れたのは、この本を書いたから。だから同じ境遇の人はみなさん、死について、夫について、書いてみるのがいいと思います。小説や俳句に限らず、日記とか、エッセイでもいい。これは本当におすすめしたいですね。