そんななか、文句ひとつ言わずに誰よりも早く起きて畑仕事をして、家族のために家事をこなし、一番最後に床に就いていた母を楽にしてあげたかった。築100年の藁葺き屋根の家はボロボロだったので、歌手になって両親に立派な家をプレゼントするのが夢でした。

夢の力は大きくて、人見知りだった私に勇気をもたらしてくれたのです。小学校時代から地元ののど自慢大会に出場、静岡地区の決勝まで勝ち進んだこともありました。歌手への夢は膨らむ一方でしたが、大人になるまで我慢するしかないと思っていたんです。

ところがテレビの歌番組を見ていたら、小学生だった小林幸子さんが出演していて。子どもでも歌手になれるのか! ってひっくり返りそうになりました。

それなら中学を卒業したら上京して歌手になろうと決意したのですが、兄から高校は卒業しておけと諭されて地元の進学校へ入学します。

そんなある日、友人たちと大好きだったザ・テンプターズ観たさに東京へ。日劇の「ウエスタンカーニバル」で大興奮し、華やかな舞台に刺激を受けた私は、自分の気持ちを抑えることができなくなりました。

親や先生を説得して、高校は1年で退学。横浜の親戚の家に世話になることにして単身上京したのです。