――平賀源内という役をどう捉えていましたか
『べらぼう』は太平の世が舞台。 そういうときに武家社会だけではなく、市井の人たちの日常を描くので、視聴者の皆さんは登場人物の感情をより近い形で見て、支持してくださる。源内は蔦重と田沼、お城と下町の橋渡しをする役割だったと思っています。
今作の源内さんは、すごく人間味がある。炭鉱に行ったり、戯作を書いたり。才が長けているけれど、落ち着きがない。飽きっぽいからこそ、いろんなことに手を出せた。でも、一つ一つが惜しい。 ただ、源内さんを大好きな人たちがいっぱいいて、今もいろんな時代劇で演じられるのは「惜しかったからこそ」だと思っています。
役作りでは、扮装合わせの前に話し合いがあったときに、「ちょっと奇天烈な感じがあるからそういう癖をつけられないですかね」ってご相談をしました。人って夢中になったときに癖が出る。台本の決定稿がきたら、「源内、舌を上唇に押し当てて」と書いてありましたね。

早口でせりふをまくしたてるのは、大原拓さんの演出です。第5回で田沼と開国について語る長いシーンがありました。全部終わると、大原さんがにやにや笑っている。「安田さん、早いもんな。5分かかると思ってましたが、でも3分半ですよ。ありがたい、ありがたい」と言われました。「あなたが早口でやれって言ったんじゃないですか」とは思ったものの、嬉しくて笑っちゃいました。
―印象に残っている源内のせりふはありますか?
「自由とはなんぞや」と語る部分です。自由とは、自らの思いによってのみ、わが心のままに生きることだけど、わがままに生きるのはつらい。立身出世したいから江戸に来たのに源内はお抱えはしてもらえない。でも、わがままを貫くんだったら、つらいのは当たり前だろ、と笑い飛ばす。
僕は事務所に所属していますし、役者ですからドラマ制作現場の一員です。組織に全く属さない人っていうのはいない。だからこそ、皆さんが共感できる言葉だと思います。