外に連れ出すのはフレイル予防

2月の札幌は大雪に見舞われる日が多く、父が一人で焼き芋を買いに行くことができなくなってしまった。寒さと雪で閉じこもりがちになるのを防いであげたい。晴れ間を見て、私は父を車に乗せて病院や床屋に行ったり、時々父の好きなランチの店に出かけたりしている。

80歳位から父は、同年代の会社の同僚たちが、足が弱って会合に出て来られなくなったことを残念がっていた。その頃私は50代になったばかりで、高齢者の気持ちがわからなかった。些細なことで父に突っかかっていた当時のやり取りを思い出す。

3月下旬、会社の同窓会で最年長者として挨拶をする父
3月下旬、会社の同窓会で最年長者として挨拶をする父

「俺はずっと自分の足で好きなところに行きたいから、スポーツクラブでトレーニングしているんだ。定年退職してから20年続けていて、筋力がある。死ぬまで自分の足で歩けるはずだ」

私は父の健康自慢の話を聞く度に、逆らって一言言いたくなる。

「パパは生まれつき丈夫な体を神様に与えられた。でもね、病気で歩けなくなった人たちが、努力していなかったわけではないと思うよ」

父は努力を私に認められなくて心外だったらしく、機嫌の悪い声で言った。

「いや、継続は力なりって言葉があるだろう? トレーニングの効果があったかどうかを見届けられるのはおまえだけだ。いずれわかる日が来る」

それから16年経った今、歩く速度は遅くなったが未だに父は杖を使っていない。とはいっても、外出先で段差があると、つまずきそうになる頻度が上がった。そのような場所では、転倒を未然に防ぐために、私は父に肩を貸して支えながら歩いている。

2年前、熱が出たのがきっかけで、父はものが食べられなくなり、歩くのも困難になったことがあるが、4ヵ月近く入院してリハビリしたら歩行能力は蘇った。確かに長年の筋トレの効果もあったかもしれないと思う。たまには褒めてあげたほうがいいのだろうか。