バリアフリーがさかんに謳われていた頃、アンチバリアフリーを推奨する人の話を聞いたことがある。その方は建築家で、住居の中のあちこちに障害物をあえて作るという思想を持っていた。
「どこもかしこも平らになって行き来が楽になると筋力が落ちてしまいます。むしろ、怪我をしない程度の段差や斜めの床やくねくね廊下を作るほうが、筋力を鍛えるのにはいいと思うんです」とのこと。
先日、ちばてつやさんのお宅に伺った。玄関に入るとまず階段。中二階に応接間があり、さらに階段を十段ほど上がったところにリビングルームと台所。さらに階段を上がり、その先の階段を上がった屋根裏にちばさんの仕事部屋があるらしい。御年八十六歳になられるちばさんは、この階段を毎日上り下りしていらっしゃるのか。声も背筋もしゃっきりなさっているのは、もしかして階段の力かもしれない。ちば宅をあとにして、帰りの地下鉄ではエスカレーターに乗るのを、とりあえず、やめてみた。
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