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阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。去年十月半ば過ぎに能登の被災所を訪れたという阿川さん。みんなの話を聞くために考え出したある秘策とは――。
※本記事は『婦人公論』2025年1月号に掲載されたものです

十月の半ば過ぎ、金沢で仕事を済ませた翌日に能登の輪島市を訪れた。

実は震災後、四月の初めに友達M子の母上が住んでいる市を訪れて、避難所で暮らしている方々と餃子パーティを催した。

なぜ餃子パーティになったか。

私の力では歌を歌って皆様を慰めることも、落語や漫才をして笑わせることも、炊き出しをすることもできない。ただ訪れるだけで何の役に立つのかと悩んでいたら、M子に、「みんな、アガワさんに話を聞いてもらいたいんです」と言われた。