役作りはせずに撮影に臨みましたが、自然と明るいキャラクターを演じていましたね。紀江おばあちゃんになりきっているうちに、認知症の世界は案外楽しいかもしれないと思えてくるという不思議な体験をしました。
この作品を通して、認知症の方に対する偏見を拭い去り、優しい目で見守ろうという輪が広がればいいなと思っています。
介護する家族の大変さはわかっているつもりです。実は私、小学生の頃、寝たきりだった祖母の介護をしていたんです。食事の世話やおむつ替え、それから床ずれの手当てもしていました。
大家族時代、子どもが祖父母の介護をするって珍しいことではなかったような……。とにかく当たり前のことだと思っていたので、大変ではあったけど苦ではなかったです。
それに、人はこうして老いていくのだと目の当たりにした経験は、精一杯に生きようという私の人生観に通じているような気がします。
それだけに核家族化って微妙だなと思うんですよ。私は両親と暮らせばよかったと後悔してます。家はプレゼントできたけど、本当の親孝行って、一緒にいることだったんじゃないかなって。
ちなみに私は最期まで施設に入れないでねと家族に伝えてます。私が認知症になったらはっきりと教えてね、とも。娘は俯きながらボソボソッと「もう認知症だと思うんだけど」って言ってましたけど。(笑)