もしも渋沢栄一が現代の女子教育の実情を知ったら?

この言葉に代表されるように、渋沢は「個人の富」ではなく、「国の豊かさ」を常に意識していたように思います。その一つが「教育」であり、多くの学校の設立に関わっています。女子教育にも大変に力を入れていました。

この事実は、渋沢の100年先を生きる女の一人である自分にもガツンと響きました。先人がせっかくこのように道を切り開いてくれたわけですが、1973年生まれの私が幼い頃はまだ「女が大学なんか行く必要はない」と言っている人も多くいました。私が四年制大学に進学した90年代初頭も「かえって就職し損ねるよ」と面と向かっていう親族もあり、実際、就職氷河期世代だったのでそうなりました(高卒か短大卒で就職していれば、ギリギリ、バブルに乗れる年齢だったのも皮肉なところです)。

話がそれましたが、もしも渋沢栄一が現代の女子教育の実情を知ったら、そして、高い教育を受けながら様々な理由で活躍の機会を狭められている女性たちの姿を見たらどう思うのだろうか? というか、もしも、渋沢がそういう女性の一人だったら、どうやって道を切り開くのか? そんな思いが拙著『渋沢栄一が転生したらアラサー派遣OLだった件』(以下、『渋沢栄一が~』)に繋がっていったように思います。

『渋沢栄一が転生したらアラサー派遣OLだった件』表紙
『渋沢栄一が転生したらアラサー派遣OLだった件』(出版:クロスメディア・パブリッシング(インプレス))

『渋沢栄一が~』は働き盛りの渋沢栄一が酔って頭を打った事をきっかけに、現代の埼玉で派遣OLとして受付嬢を勤める女性に転生する物語です。内容については、ご一読いただけたら幸いですが、「こんなの夢物語。小説の中だけの話だ」と思う方も当然いるでしょう。ですが、渋沢はこうも言っています。

「夢七訓
  夢なき者は理想なし。
  理想なき者は信念なし。
  信念なき者は計画なし。
  計画なき者は実行なし。
  実行なき者は成果なし。
  成果なき者は幸福なし。
  ゆえに幸福を求むる者は夢なかるべからず。」

私は冒頭の文章で「幸福を感じることが難しい」と書きました。でも、そういう時代だからこそ、「夢」を見る力が必要なのだと思います。きれい事ではなく。