天才エッセイストに嫉妬

数年前、初めて書いた文章がすぐにSNSで大バズりし、一夜にして有名なエッセイストが誕生した。

彼女のエッセイは腹を抱えて笑い転げるほど面白く、しかも更新するスピードが早い。「これまで文章を書いたことがない、本も読まない」と言うのだから完全に天才だ。

彼女は自分を売り込むわけではなくいつもひょうひょうとしていた。「少しでも面白くなりたい」と本を読みまくり「少しでも名を売りたい」と界隈に必死にアピールしまくっている私からすると、それがまた悔しかった。

私が数週間かけて書いた1本よりも、彼女がいとも簡単に書いた(ように見える)1本の方が何倍も読まれ、拡散され、絶賛のコメントがつけられた。全然敵わないじゃん。
「それに比べて斉藤ナミはつまんない」と言われているように思えた。

数ヵ月後のある日、彼女が「お知らせがあります」とSNSで珍しくしっかりした告知をした。あの時の心臓のバクバクは決して忘れない。
嫌な予感はしていたが、やはりエッセイ集刊行のお知らせだった。