嫉妬という怪物がのたうち回っている

本の出版はほとんどのエッセイストにとっての夢だ。当時まだ本を出せておらず焦っていた私は、彗星のごとく現れてあっという間にその夢をつかんだ彼女が羨ましくて仕方なかった。

私はこれだけ頑張ってようやく最近連載をもてたばかりなのに! パッと書いたものがすぐ当たってもう書籍化? 私は40代、あなたはまだ30代なのに。

斉藤ナミさん
とにかく読むのも好きなのだが、つい「勉強目線」が入ってしまう…

SNSに「絶対読みます。めちゃくちゃ楽しみです!」と震える手でコメントを入れながら、体中で嫉妬という怪物がのたうち回っているのを感じた。本音が透けていないか不安になった。普通に祝福に見えていてくれ。

面白いだけではなく明るく朗らかな彼女のエッセイ集は、読むと元気が出るので、落ち込んでいる時に読みたくなる宝物のようだと評されている。

それに引き替え私の文章は暗くてジメジメしている。自己愛をさらけ出していて面白いと言ってもらえるが、読むとどんよりする人もいるだろうし落ち込んでいる時にはあまり読みたくない。

彼女の本が刊行された後、しばらくして私もエッセイ集を刊行できたが、それでもやはり彼女に対する嫉妬の炎は消えない。彼女の本と私の本、それぞれに寄せられる感想の数や内容を比較してはいちいち嫉妬してしまう。