「現実的な話、売却するにせよ、中を整理して使うにせよ、動くのは一人娘である私。《あの家問題》は、ずっと肩にのしかかっていました」(撮影:大河内禎)
いつか片づけなくてはと思いながら、10年以上物置と化していたという川上麻衣子さんの実家。とある〈事件〉をきっかけに、高齢の両親を説得し、重い腰を上げて整理することにしました。1ヵ月で大量のモノを仕分けして感じたこととは(撮影:大河内禎 構成:丸山あかね)

一つひとつに強い思い入れが

一昨年、「実家じまい」をしました。思えば長い道のりで……。10年以上にわたり、両親と顔を合わせるたびに、「ところであの家、どうする?」と話題にのぼっていたのです。ところがその話になると、両親はいつも示し合わせたようにダンマリ。埒が明かず、私から話を変えてうやむやにするのが常でした。

でも現実的な話、売却するにせよ、中を整理して使うにせよ、動くのは一人娘である私。「あの家問題」は、ずっと肩にのしかかっていました。

「あの家」とは、1967年に両親が購入した神奈川県相模原市鵜野森にある実家のことです。高度経済成長期に建てられた集合住宅で、当時はモダンだと話題になったそう。とはいえ、もうすぐ還暦を迎える私がものごころついた頃から暮らしていた家ですから、ヴィンテージもいいところ。

しかも私は17歳でその家を出て都内で一人暮らしを始め、両親も最寄り駅まで徒歩20分という不便さから、約30年前に都内の賃貸マンションに移り住んでいました。

その時点でさっさと売却してしまえばよかったのですが、そうできなかったのは、愛着のあるモノたちをそっくりそのまま残していたからです。