口腔機能の衰えを放置すると、死亡リスクがグンと…
そして口腔機能低下症が病気である以上、治療が必要になります。さらに換言すると、「口腔機能低下症」は治療しないと悪化する、ということです。
「食べる」「飲み込む」などの口腔機能が悪化するとどうなるのでしょうか? 実は、全身の健康状態にまで影響を及ぼします。
新たに口腔能低下症が発症した場合、2年後に寝たきりの前兆である全身の「フレイル」になるリスクは(発症していない人に比べ)2.4倍、筋肉が衰える「サルコペニア」になるリスク2.1倍に。さらに2年後には寝たきり状態である「要介護認定」のリスクは2.4倍、そして高齢者死因第3位の誤嚥性肺炎を含めて「総死亡リスク」が2.1倍になります。
このように口腔機能の衰えは口の働きだけでなく、全身の衰えを助長する原因となるのです。その反面、しっかり防止策を行えば、全身の健康を損なうリスクがなくなるどころか、医療費の抑制にもつながります。
香川県歯科医師会が70歳以上のオーラルフレイル該当者に対して、口腔機能改善プログラムを行った調査結果を発表していますが(統計・分析は香川大学)、その結果、口腔機能が衰えている者は口腔機能が衰えていない者よりも全身の衰えが進行する傾向があり、前者の中には要介護2〜5の者が含まれていました。
(口腔機能が衰えていない者と比べ)口腔機能が衰えている者は、1年間に医者で治療を受ける日数が9.1日多く、年間医科診療費は198,800円高いという結果に。また年間調剤費も口腔機能が衰えている者は96,500円高い傾向がありました。
つまり<年間の医療費は口腔機能が衰えると約30万円多くかかる>という事実が判明したのです。そして、改善プログラムを継続することで口腔機能が向上することも確認されています。
これらのことから、口腔機能が低下し始めた人が早期に適切な対応を行うことで医療費は抑制され、健康寿命の延伸が期待できることが分かりました。健康的な一生を送るために、口腔機能を維持するのは大変に重要、ということです。