大きく話題になった<老後2,000万円問題>。金融庁発表の『高齢社会における資産形成・管理』という報告書で「年金受給者では2,000万円が不足する」と試算されたのがそのキッカケでした。老後となれば、食費や光熱費などに加えて、医療費が多くかかるのが当然のように感じがちですが、実は身近なある疾患対策をするだけで<年間約30万円>も医療費を減らせる可能性があるのをご存知でしょうか? 幸町歯科口腔外科医院で院長を務める宮本日出先生が解説します。
老後を健康に過ごしたいなら
老後を健康に過ごそうと思うなら、真っ先に取り組むべきなのが「寝たきり対策(要介護対策)」になります。
2023年での男性の平均寿命は81歳、女性は87歳(厚労省)ですが、健康寿命との差は男性8歳、女性11歳で、この期間が不健康期間と呼ばれる「寝たきり期間(要介護期間)」となります。
健康だった人が病気以外の原因で突然、寝たきりになる事は少なく、多くは全身の筋肉が徐々に衰えて行き、最終的に寝たきり状態に。全身の筋肉が衰えていく、いわゆる「ヨボヨボ期間」を「フレイル(虚弱)」と言います。
一度寝たきりになってしまってから健康状態に戻るのは簡単ではなく、全身の機能を向上させるために特別な対策が必要となることが少なくありません。
しかし、まだフレイルの状態であれば、生活に運動習慣を意識して組み込んだり、筋力維持のためにタンパク質を豊富に取り入れた食事管理によって、対策や悪化防止に繋げることはまだ可能です。
フレイルに有効な運動として推奨されているのは、男性はダンスや自転車、女性はウォーキングや登山など(筑波大学の発表)。そして高齢者におけるタンパク質の摂取量は体重1kgあたり1gが推奨されています(厚労省の発表)。なお、私自身はさまざまな医学的調査から1.5g/kgが良いのでは、と考えています。