集中できないのはわけがある

今の社会では集中できないと様々な弊害が生まれる。ではなぜうまく機能しない報酬系を持つ人間が存在するのだろうか。集中できる度合いが他の人とは違っているが、そこに理由はあるのだろうか。おそらくあるはずなので、ここで時間を巻き戻してみよう。

祖先2人がサバンナで食べ物を探している。1人はなかなか作動しない報酬系の持ち主で、木の上や茂みでちょっと音がしたりさっと風が吹いたりしただけでそちらに気を取られる。

「ん? 今のは何だ? いや何でもないようだ。じゃあ、あれは? あれも何でもないか。でもこれは?」という調子だ。常に周囲を観察しているので、自分の周りで起きていることを完璧に把握している。どんなに小さな感覚刺激も脳が排除しないので、どうでもいいようなことまで認識している。

(写真提供:Photo AC)

もう1人はどうだろうか。食べ物を探すという任務にはもちろん集中しているが、脳はそれとは無関係な音や刺激の大部分を排除している。茂みの中で聞こえるかさっという音はおそらく風だろうから耳にも入っていない。実はウサギの可能性も捨てきれないのに……。レイヨウやライオンがそばに現れれば気付くだろうが、茂みでかさっと音がしたくらいの情報は脳が排除してしまう。

では、この2人のどちらが食べ物を見つけて生き延びられる可能性が高いだろうか。私なら当然、すぐに気を取られる人に一票を投じる。かさっという音は10回中9回までは風だろうが、最後の1回は食料になるウサギかもしれないのだ。