吹雪の中を歩いて……
振り返ってみると、お金のなかった若い頃の旅公演のほうが、楽しかったかもしれない。いかにお金を使わずにおいしいものを食べるかを考えるのなんて、まさに青春。またそうやって自分で見つけたお店は、やっぱり忘れられないんだよ。
たとえば長崎の「桃若」というおでん屋さん。おばあさん3人でやっていて、長崎公演があるたびに、元気かなと思って通っていた。
それから、猛吹雪の紋別! 終演後、裏方さんがバラシ(セットの解体作業)をすべて終えた帰り道、吹雪のなかをみんなで歩いて見つけた店で、サンマの刺身を生まれて初めて食べたの。
今でこそ東京でも食べられるけど、当時は貴重だったから感動した。店に入った時、あったかくてね……。その後、何度も紋別に行ったけど、やはりその吹雪の日が一番印象に残ってる。
魚と言えば、愛媛の松山で公演が休みの日に釣りをして、釣れた小アジを漁港の食堂に頼んで天ぷらにしてもらったこともあった。最高のご馳走だったなあ。