突然、深夜に着信が。おそるおそる出てみると
私たちは直接会ったことも話したこともないが、一度こんな出来事があった。文通を始めて10年ほどが過ぎた、ある日の深夜。携帯電話にKちゃんから着信があったのだ。こんな時間に何かあったのだろうか。
「はい、もしもし。……Kちゃん?」
真っ暗な寝室で話しかける。私の心臓の鼓動が相手に聞こえているのではないかと思うような、緊張の瞬間。電話の向こうからは、ガサガサという音だけが聞こえる。急病で倒れたのだろうか。遠くにいる私に何ができるだろう。
いろいろ考えを巡らせていると、1分ほどで電話は切れた。こちらからかけ直すべきか――。迷っているうちにメールが届いた。「ごめん! 子どもがいたずらしちゃって。びっくりしたよね」。
びっくりしたよ、とだけ返した。勝手にパニックになった私も悪いが、少々お騒がせな親子だ。ホッと胸をなで下ろすと同時に、彼女の声を聞いてみたかったな、とも思った。
一度、電話で話してみるのはどうだろう。手紙の文章とは違い、おそらく彼女は関西弁だ。東北なまりの私とは、話すテンポもイントネーションも違いすぎるだろう。
でも、お互いがおばあさんになってしわがれた声になる前に、話したい気もする。思いは募るものの、勇気は出ず、時間だけが過ぎていく。