「いい条件が重なったから」
第7回。職場での嫌がらせとは違った現代の悪意が描かれた。ネットのアンチコメントである。
麦巻はデザイン事務所で知り合った友人の書籍編集者・青葉乙女(田畑智子)とウズラ(宮崎美子)と称する60代の団地住民と会う。ウズラはスーパーの特売品を素材にして、堂々たるイタリア料理をつくり、それをSNSに載せていた。人気があった。
青葉は「50代からの女性の1人暮らし」という本の出版を計画しており、ウズラを取材したいと考えたのである。しかし答えはノー。過去、SNSにアンチコメントを書き込まれ、傷つき、抗うつ剤を飲んでいた時期があるためだ。
麦巻は「ネットの言葉はきつく感じられますからね」とつぶやいた。ウズラは首を縦に振ったあと、こう口にした。
「今は苦手なことは避け、1人静かに暮らしたいので」
そもそもウズラは孤独を恐れていない。ウズラは過去を静かに語り始めた。
「私、若いころはロック少女だったんですよ。それも異端な感じのバンド。そのせいで、どこにも属さない人間がカッコイイもんだと擦り込まれていて。だから1人でいることを憐れんだりする今の風潮は苦手です」
これも生きるヒントの1つに違いない。共感した人や勇気付けられた人は多いのではないか。
この第7回、麦巻はあることを思い出す。第1回とは違う機会に風邪をひいた際、大根をかじったが、効かなかったのである。それを聞いた鈴は、最初の大根に効果があった理由について「いい条件が重なったからよ」と笑った。
人生もそうなのだろう。出会いなどでいい条件が重なると、満ち足りた日々を送れる。ただし、どうすればいい条件が重なるかは誰にも分からない。大根を風邪に効くようにするにはどうしたらいいのかが定かではないのと同じである。