大きすぎて食べこぼしてしまう雛たちの様子を微笑ましく見守り…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは新潟県の70代の方からのお便り。ある出来事の後、駐車場の軒下に巣を作るようになったツバメのつがい。子どもたちの巣立ちまで応援しつつ見守っているそうで――。

また来年も

21年前の秋、娘に第1子が生まれる予定でした。ところが、残念なことに死産。悲しみに暮れながら過ごしていると、翌年の4月、わが家の駐車場にツバメがやってきて建物の軒下に巣を作るようになったのです。まるで亡き孫の代わりに訪れたようでした。

娘もそう思ったのか、「お母さん、Aくんだと思って世話してあげて」と。それから毎年、ツバメのつがいを迎え入れることになったのです。

お世話といっても、巣作りの邪魔をしないような生活をこころがけるだけ。しかし昨年は巣作りに2度も失敗し、心配が募る日々でした。異常気象が関係しているのでしょうか、毎年判で押したように4月1日に来ていたのに、この年は5日。

ツバメは前の年の巣を修復して使うのですが、遅く来たのであまり丁寧にできなかったのかもしれません。あるいは材料となる泥や藁がこの界隈では少なくなっていて、うまく見つからなかったのかも。2度とも巣の強度が足りず、卵が3つも犠牲になってしまいました。

3度目でやっと成功したことを確信したのは、お腹を空かせた4つの嘴が巣からのぞいているのを見つけたからです。お母さんツバメが忙しく餌を運んできます。張り切って捕まえたであろうトンボ。大きすぎて食べこぼしてしまう雛たちの様子を微笑ましく見守りました。