在宅介護と施設介護をうまく使う
長年お母さまの在宅介護をしている井上さん(仮名、以下同)は、わたしが上手に介護されているなあと思っているひとりです。最初はわたしの施設のデイケアに通われていましたが、お母さまはすでに要介護5、食事を含めすべての日常動作に介護が必要になり、現在は平日は介護老人保健施設(老健)のショートステイで過ごし、週末は在宅で介護しています。
老健からは訪問リハビリテーション(リハビリ)スタッフが訪問し、できるだけ楽に介護ができるよう、ベッドの位置、手すりの位置などを助言したり、拘縮予防(手足が硬直してしまうのを防ぐ)のマッサージの方法を娘さんにお伝えしたりしています。そして、お母さまが入院すれば、その後しばらく老健に入所し、体調が戻ればまた在宅生活へ、を繰り返しています。
いつかずっと入所になるかも、と言いながらも、もうしばらくがんばります、と娘さんは笑顔でおっしゃっています。そして、自宅で無理になったらすぐ入所できる場所があるというのは、介護のストレスが軽減します、ともおっしゃっています。
そうなのです。介護が始まったら、可能な限り早い段階で井上さんのように、「地域の老健」とつながりを持つことをわたしはおすすめしています。老人ホームのすすめや、ほかの介護本でもあまり取り上げられない「老健」。この施設を正しく理解し、うまく活用することが介護を楽にするポイントだと思っているのです。