息子のおかげで親孝行できた
父 大阪公演では、君の大阪のおじいちゃん、おばあちゃんにも観てもらえるね。僕の父は90歳で、母は82歳。なにせ僕は三度目の結婚で、君は46歳の時に授かった息子だから。孫は見せてあげられないかなと思っていたけれど、「間に合った!」という感じかな。孫の成長を見守る喜びがあるから、長生きできているとも思うので。僕も親孝行できたし、君はおじいちゃん孝行、おばあちゃん孝行してくれている。
まぁ普段の僕は、なかなか仔獅子を谷に落とせない親獅子だけど(笑)、今回は、千尋の谷に落としてどう這い上がってきてくれるかが楽しみでもある。お稽古の時は、パパ、厳しいものね。
子 でも、お稽古は楽しいです!
父 宿題をやっていると、「お稽古したい」と言うものね。(笑)
子 僕は小さいころから歌舞伎が大好きで、パパが演じているのを見ると、カッコイイと思う。
父 うれしいね。本当に、よくできた子だ(笑)。まぁ、好きじゃなかったら、やらせていないと思う。無理にやらせても、厳しい世界だから、イヤになるでしょう。君のお稽古で、パパが一番嫌いなことは、何?
子 できたことが、できなくなる。
父 そう。それが一番嫌い。そういう時は、かなり厳しく言うよね。
子 はい。
父 でも、お稽古以外の時はやさしいよね。地方公演で、1ヵ月単位で家をあけることもあるので、東京にいる時は送り迎えもなるべくしているし。2人が違う公演に出ていると大変。昨年秋は、僕は市川海老蔵さんが率いるABKAIの舞台に出ていて、君はスーパー歌舞伎IIの『新版 オグリ』。朝、君を新橋演舞場に送ってから、自分が出るシアターコクーンに行く。ママも大変だったし、家族一団となって、3人6脚でやっている感じだよね。
子 大変だったね。
父 それにしても、こんなに子どもが好きになるとは、自分でも思っていなかったな。以前はどちらかというと、小さい子は苦手だったんだ。パパも子役から舞台に出ていたので、大人の世界で育ったようなところがあるせいか、子どもを子どもとして扱えないような部分があるんだよ。
いわゆる“赤ちゃん言葉”も、昔は照れくさくて使えなかったし、まわりの人の子どもも怖くて抱っこできなかった。それが息子を授かったおかげで大変身! 自分でも驚いてる。