「今回お話をいただいたときは、ちょっと不安だった。君はまだ9歳で、それまで親子で『連獅子』を踊ったことはないし、チャンスは1回きり。しかも、世界40億の人が見るわけだから」(右團次さん)/撮影:藤澤靖子
歌舞伎界だけでなく、テレビドラマでも活躍中の市川右團次さん。三度目の結婚で授かった息子・右近くんとのほほえましい様子がSNSやバラエティでも話題に。最近の活動からプライベートまで、おふたりに聞きました(聞き手・構成=篠藤ゆり 撮影=藤澤靖子)

世界40億人の前で親子で踊って

──2019年9月20日、ラグビーワールドカップ日本大会の開幕式で、おふたりが登場し、『祝勢揃壽連獅子』の「毛振り」(首を使って長い毛を大きく回すこと)を披露。日本大会の公式マスコット「レンジー」にちなんだ粋な演出に、会場は大いに沸きました。

右團次(以下、父)ラグビーワールドカップの開幕式で親子で、『連獅子』をやらせていただきました。君は踊ってみて、どうだった?

右近(以下、子)毛振りをするのは初めてで、疲れたけれど、とても楽しかった。

 公式マスコットの「レンジー」は、男女のカップルに見えてしまう。実際の連獅子は親子だということを世界に発信しようということで、今回お話をいただいたときは、ちょっと不安だった。君はまだ9歳で、それまで親子で『連獅子』を踊ったことはないし、チャンスは1回きり。しかも、世界40億の人が見るわけだから。

でも、覚悟を決めて稽古するしかないという決意に至って……。練習用の毛を早めに借りて、何度も稽古したよね。ちょうど君はドラマ『ノーサイド・ゲーム』を撮っていた最中だったから、その合間を縫いながら……。

 最初は毛が足にからまって、難しかった。

 時には頭にからまってソフトクリームみたいになったりして、大変だったよね。

 振っている間は、どうなっているのか、自分ではよくわからないし。

 でも、本番では緊張はしなかったんだよね。

 すごく人が多かったけれど、普段の舞台でもお客様が大勢いるから。ただ、広さがぜんぜん違った。

 緊張するヒマがなかったというのが正直なところかな。グラウンドの芝生にマットを敷いて演じるので、芝生を傷めないよう、リハーサルは30分以内。本番2日前に段取りを確認して、1回踊っただけだったし、本番は2分半だったから。

 あっという間だったね。

 『連獅子』は本来、40~50分かかる演目で、狂言師の格好で前ジテを舞い、毛をかぶっての後ジテは最後の約9分。なんとか後ジテを完全に踊れるようにしよう、とお稽古をしました。それで後ジテができるようになったので、次は前ジテをがんばれば、親子で『連獅子』を舞台に上げることができる。だから、この春に全国を回る「伝統芸能 華の舞」のためにがんばってもらおう、と。いい機会だからね。

 日本全国に行くの?

 10ヵ所で公演があるから、移動も多い。だから、体調管理にも気をつかわないと。

 行ったことのないところにあちこち行けるのは、楽しみだな。