虚無感を感じながらカラー
「すみません、一昨日のカラーがもう抜けてしまったのですが」
専門店に電話を入れて、直してほしいと伝えた。もう5年近く、虚無感を感じながらも通っていたのに初めてのトラブルだ。ただ店長だと電話口に出た若者は、声にハリも敬語もない。今まで店で会話がなかったために、この事実に気づかなかった。
「一昨日だとー、ウチ、やってなくて……最初、店で書いてもらったんだけど……」
「施術同意書ですよね。あれ、本来は毎回書かないと法的根拠もないですし、あっても一年くらいしか有効期間はないです。あのクレームをつけるつもりもないですし、ショップカードにも染めてから二日以内ならと書いてあるので……あれ? もしもし?」
店長との会話中、突然電話が切れた……ではなく、明らかに切られた。クレーマーのような話し方はしていないつもりなのに、一体に何が? 再度、店に電話を入れる。
「先ほどの方ですよね? ひょっとして電話を切られました?」
「……俺、電話苦手で。とにかくオーナーに聞いてから、また電話入れるんで。ちょっと待っててく……ださい」
会話の途中で電話を切られるとは、怒髪天を衝く怒りを感じると思いきや、その逆でショックだった。まともな会話が成立しない店に長らく通っていた履歴も「なんだかなあ」とため息。結局、後日、カラーは直してもらった。