白髪カラートリートメントとカラー専用のブラシ
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第53回は「白髪染めトラブル」です。
前回「ディズニーホテルでMrs. GREEN APPLEを見た!ミッキーに負けず劣らず独特のオーラと可愛さの3人は、“とても気の良さそうなお兄さん”」はこちら

白髪染め、瞬く間に落ちる

「あれ? 色が抜けてる?」

洗面所で前髪を見て、思わずひとり言が出た。一昨日の夜にカラー専門店で染めて、当日はシャンプーせず、翌日夜洗っただけ。そして翌々日の朝、洗面台の鏡の前に立って驚く自分がいる。これはトラブル勃発だ。どうしよう。

まずは私の白髪ケア事情から。

もう20年近く担当してもらっている美容師がいるので、髪の毛に関しては任せきり。でも40代から活発になってきた白髪染めイタチごっこは、別問題である。田中みな実は2週間に1〜2回、ヘアメンテナンスのためにサロンへ通っていると、以前インタビューで話していたけれど、凡人の私には無理だ。白髪が伸びたと、青山まで通う時間もポテンシャルもない。でも気になる、前髪に顔を出す白髪軍。

白髪に悩み始めた当時、タイミングよくバスで「まだ白髪を家で染めていますか?」「2000円で即仕上がり!」とキャッチコピーが書かれたカラー専門店の広告を見て通うようになった。入店してまず料金を払い、白髪を染めて、時間を置いて、オートシャンプー。仕上げのブローは自分で行う流れになっている。約1時間で終わるし、何より徒歩圏内に店舗があるので、化粧をしなくていい。ただ違和感があるとすれば、青山の美容院の空気感とは全く違い、美容師との会話は必要なこと以外、一切ない。

(この虚無感よ……)

カラー剤を塗られて、頭ラップを巻いて、色の浸透を待つ間、いつも私の脳内には『ドナドナ』が流れていた。別にここへ来たくて来ているわけでもなく、ただ白髪を隠すために時間を潰す。美意識を高めるのではなく、もう単なる作業であり、通院に近い。白髪の消えた私は馬車に揺られて、どこかへ売られていくのだ。ああ、おばさんにはもう買い手もないか。