友情関係はあっけなく終わった

帰国すると案の定、5人が私の持っていない想い出をたくさん作ったことを知らされた。
「あの時、ケビンがさー」「ウケたー!」
私にはわからないオーストラリアトークで盛り上がっている。

わざわざ私の前でその話をするなよ。
みんなでお喋りしていても、私が喋るとそれまで盛り上がっていた空気が静まるような気もした。マリのつまらない話より、私の方が断然面白いのに。

みんなからお土産にもらったお揃いのピンク色の髪のトロール人形のキーボルダーを見るたび虚しさを覚えた。トロール人形はノルウェーの妖精だろ。それに、みんなは5人で出し合ってキーホルダー1つなのに、私は一人で5人にティムタムを1パックずつ買ったことも納得いってない。しかも今調べたところ、ティムタムこそオーストラリアのお菓子だった。

疎外感を感じるのと同時に彼女たちの言動全てに苛立ちを感じるようになった。うまく立ち回る日和見主義なマリ。全部真似してきて、さも自分のセンスのような顔をしているルイちゃん。何より、そんな場所にしがみつく自分自身に嫌気がさした。

そんな2年の終わり、父がなんと我が家から消えた。私の学費も消えた。以来、父は今も行方不明だ。

私は3年生に進学することなく高校を中退することになり、6人の友情関係はあっけなくそこで終わった。

あのグループと離れてほっとした時間でもあった