(写真提供:筆者 以下すべて)
noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、『褒めてくれてもいいんですよ?』を上梓した斉藤さんによる連載「嫉妬についてのエトセトラ」。第6回は「高校デビュー&友達ヒエラルキー地獄」です

前回「『対岸の家事』を観て、孤独な専業主婦だった子育て時代を思い出す。『体験格差』にもギクッとさせられた」はこちら

高校デビューの話

いかに彼女に気に入られるか。高校生活ではそればかり考えていた。

小柄でかわいい天真爛漫な人気者、カナ。ミッション系の女子校らしからぬ派手なメイクに茶髪、改造した制服で、いつもシスターや先生に怒られていた。

クラスのみんながカナを意識していた。彼女は間違いなくヒエラルキーのトップだ。

一方私は父のギャンブル依存症のせいで転校ばかり。加えて中学まで母がある宗教の信者だったこともあり、これまで私の友達づくりはまったくうまくいかなかった。

父は競艇狂い。その成果で家が買えるほど儲けたり、それを売り払っても夜逃げしないとならないほど負けたりと波が激しかった。母はそんな生活を嘆き、それでも父と別れられず宗教に救いを求めた。その宗教では偶像崇拝や競争、輸血は禁止。神の教えにそむいた子どもには愛のムチを打つといった戒律があった。

偶像崇拝にあたるため国旗掲揚も国歌斉唱もできない。体育の競争競技もしない。転校してきたそんな奇妙なヤツと仲良くしてくれる子は少ない。

その母もようやく宗教を脱会してくれたし、父の波に合わせてうまく入学資金をやりくりでき、なんとか入りたかった高校に入ることができた。高校では私のことを誰も知らない。今度こそ普通に友達を作って楽しい日々を過ごしたい! 心機一転、生まれ変わったつもりで高校デビューに挑んだ。