「でも、自分がキーパーソンになると名乗りをあげてくれる方がいなかったら、収拾がつかなかったと思います。ケアマネジャーとの打ち合わせや薬の管理など、早急に解決すべき問題はその方が対応し、誰でも介護ができるよう『やることリスト』まで作成してくれました」
由美さんの様子やその日の介護内容は、LINEで逐一報告。そして意見を交わしながら、よりよい方法を模索していった。
「最初は1人ずつ介護に当たっていたのですが、シリアスな空気になりがちなこと、容体が急変した場合に心細いことから、2人以上で、と改めたのです。連帯感が日増しに強まっていくのを感じました。だからこそ、彼女が仙台へ移動する日は切なくて……。
でも、『みんなが次々に来てくれて嬉しかったし、最高に楽しかった』と言ってくれたので、笑顔で見送ることができたのです」
由美さんは2週間後、息を引き取った。都内で行われた由美さんを偲ぶ会には、LINEグループのメンバーが集ったという。
「ずっとLINEでやりとりしていたので、初めて顔を合わせる人も多かったのですが、故人との思い出を笑って語り合う素敵な会でした。それぞれの人が、それぞれの場所で彼女と知り合い、絆を築いていた。今回突き動かされた私たちの共通点は、彼女と楽しい時間を過ごしたことがある――。それに尽きるのだと思います」
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人間関係が希薄な時代と言われるようになって久しい。でも、本当にそうだろうか? そう問わずにはいられない、希望に満ちた取材だった。
楽しさを共有することと安心感を与え合うことは、表裏一体なのかもしれない。充実した人生を過ごすためには、コミュニケーション力と行動力が必要なのだと肝に銘じて歩んでいこうと思う。