箱根の旅のシーンに新たなアクセントが誕生
同館を経営する森トラストグループは、伊達美和子社長のもとで、地方創生・訪日外国人の分散化を狙い、全国各地でのインターナショナルブランドホテルの展開を進めている。
都心部では国内初となる「コンラッド」「エディション」「1Hotels」などの、インターナショナルなホテルブランドを誘致。地方では、その土地でしか体験できないデスティネーションホテルの開発に注力する。
「特に一昨年前に開業した『紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良』では旧奈良県知事公舎を、昨年開業した『ホテルインディゴ長崎グラバーストリート』では明治期に建設された修道院を活用し、関係者や周辺の地域の方々から評価をいただいています。歴史的価値のある建造物は、ただ保存するだけではなく活用することで、その体験も含め、後世に遺していけるものと考えています」と、伊達さんはこれからの望ましいホテルのあり方を提起する。
ラフォーレ箱根強羅 湯の棲では、木立にたたずむ既存本館の雰囲気を損なうことなく、新館の綾館で旅のトレンドに応えた。

そこには、「世界の旅行者のトレンドに合わせ、ホテルそのものに集客力を持たせることによって、外国人観光客の国内回遊も促進できる」(伊達さん)という、オーバーツーリズムの課題解決への意図も込められる。
現在、滞在客の3~4割が外国からの観光客というが、いわゆる大型ホテルではないので、一人旅からカップル、少人数のグループが主体。ダイニングでは、浴衣を着た外国人小グループが、わきあいあいと日本の旅を楽しむ様子があり、そのわくわくした感じがこちらにも伝わってきて、ほほえましい。
カーテン、家具、照明から、箱根寄木細工のコースターやアメニティまで、滞在客が目にするものは細部まで気配りが行き届いている。ダイナミックなホテル戦略を進める経営者と、気鋭のインテリアデザイナーという、二人の女性の活躍で、箱根の旅のシーンに新たなアクセントが誕生した。