亡くなった時の所持品は

話が逸れてしまったが、このヨハネ・パウロが26年の任期を経て亡くなった後、選挙で選ばれたのはドイツ出身の教皇ベネディクト16世だった。私はこの教皇とも以前とある素っ頓狂な状況で会ったことがあるのだが、文字数が足りないので端折る。

ベネディクト16世は高齢を理由に600年ぶりに存命中に退位、その後に選ばれたのが今回亡くなったアルゼンチン出身の教皇フランシスコだが、教皇になっても驕らず、司祭になる前には熱愛した彼女がいたとか、サッカー好きという大衆的側面から彼を慕う人は多く、いくつかの映画やドキュメンタリー作品にもなっている。

教皇フランシスコが亡くなった時の所持品はわずか3つ。アルゼンチン人の職人が作った履き古した革靴と、カシオの時計。それと聖書。埋葬も本人の意思どおり、慎ましく簡潔に執り行われた。

カシオ愛好者の夫は「僕のせいで」とわざとらしげに嘆いていたが、長きに及ぶカトリックの歴史がこの特異な教皇を経て、今後どのように変化していくのか気になるところである。

 

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