第266代ローマ教皇フランシスコが死去する前日、親族の集まりでなんともタイミング悪くされた夫のある発言。気にしている夫を横目に、マリさんは1985年の復活祭の出来事を思い出して――。(文・写真:ヤマザキマリ)

変化するローマ教皇

イタリアでは久しぶりであることを「ローマ教皇の亡くなるタイミング」と表現することがある。選出される教皇は高齢の場合が多いが、それでも長く任務に就く場合もあるので、こんな言い回しが生まれたのだろう。

今年の復活祭に当たる4月20日、イタリアの夫の実家に親族38人が集まった。何年ぶりだろうね、という話になった時、夫が無意識に「もうローマ教皇の亡くなるタイミングでしょう」と発言。別に不謹慎とはされていないので皆笑っていたが、翌日、第266代ローマ教皇フランシスコが死去した。

母親から「あんなこと言うからよ!」と言われたそうだが、長く患っていたのでおそらく夫のせいではない。

私がイタリアに暮らし始めた40年前は、ポーランド人のヨハネ・パウロ2世が教皇だった時代だった。彼の前任のヨハネ・パウロ1世は任期わずか33日で死去し(暗殺説が根強い)、その後任は455年ぶりにイタリア人以外、しかも当時社会主義国だったポーランド出身ということで大きな話題となった。