たとえば『ラ・カージュ・オ・フォール』で演じた、ゲイカップルで息子を育てているザザ。初演の稽古中に脳梗塞で倒れて入院したおふくろが、「まさ、体大丈夫か」と、自分のことより息子である僕のことを心配した。
その、息子のことしか考えていないおふくろの愛情をザザの役作りに繋げたのは、自分ならではの感性だったんだと思う。
親との関係で言えば、僕の親父もそんなに子どもと話すほうではなかった。でも一度、「勉強しろ」と頭をゴツンと殴られたうえにグリグリやられて、お供え餅みたいにコブができたことがあって。あの痛さは今でも覚えているくらいで、それ以来、恐ろしくて逆らえなかったね。
ただ、新聞記者だった親父が新聞に、ある日、僕のことをこう書いていたんだ。
「勉強しろと言うと嫌な顔をする。じゃあしなくていいと言ったら、シメたとばかりにニヤッと笑う」と。
子どもというのはいつの時代も一緒なんだよ(笑)、スマホがあろうがなかろうが。だからきっと、息子たちもいずれ父親になったときにわかるんだろうね。「あ、パパが言っていたのはこういうことだったんだ」って。