舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の新連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第7回は「欲が出たら芝居じゃなくなる」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)
ひたすら台本を読んで
3月からミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』の舞台が始まりました。初めてテヴィエ役を演じたのは2004年で、今回でもう7回目。その間に積み重ねてきたものを体が覚えていて、最初の公演を思い出しながらの稽古は、4日間でできてしまいました。
でも、大事なのはそこから。前回の上演から4年が経って、僕自身も変わっている。やっぱり、今の自分の中から生まれるもので作っていきたい。1967年の日本初演からテヴィエを演じられた森繁久彌さんの映像を久々に観たことも大きかった。
森繁さんのあとを引き継いだ西やん(西田敏行さん)の映像は残念ながら持っていなかったんだけど、森繁さんや西やんの、そのとき生まれたようにセリフを言う、という部分を今回は出したいと思ったんだ。
それから、いわばストーリーテラー的な役どころでもあるから、僕がまず生き生きとした芝居をして引っ張っていかないと、周りの芝居にも影響が出てしまうとも思った。
実際、『ラブ・ネバー・ダイ』のときもそうだったけど、『屋根の上』の稽古場でも、「市村さんはどうやるんだろう」というみんなの真剣な視線をビシビシ感じるの。そこまで強い圧を向けないでと思うくらいに(笑)。
だから、僕が少しでも変われば周りも神経を研ぎ澄まして、いいものにしていけると思ったんだよね。