恐る恐る覗くカウンターには
実際、この店いい感じだナ、一人でも入りやすそうだナ、入ってみようかナと思ったことは何度もあった。
しかし、恐る恐る暖簾の隙間から中を覗くと、カウンターは圧倒的におじさんで占められている。
それもなんというか、普通のおじさんじゃない。一人飲みをするおじさんである。いうならば「おじさんオブおじさん」である。いかにもディープである。
そこにうら若き女性が……いや間違えた、うら若けりゃそれはそれでなんだかドラマティックというか絵になる気もするが、うら若くもなんともないオバハンが一人割り込んでいくのである。
さぞかし皆様、解釈に困るに違いない。こいつは一体……何がしたいのか? 何かあったのか?で、何者?
……えーっと、そりゃこっちが聞きたいよ。別に何がしたいわけでもないんだから。しかしそれをどう表現していいのかわからない。
まさか最初からペラペラ言い訳するわけにもいかないし……などと考えるだけで手汗がにじみ、結局、何事もなかったかのごとく、ただの通りすがりデスという小芝居をしながら店を離れ、いつものようにうどん屋やカレー屋を探し、そそくさと食べ寂しく夕食を終える羽目になるのであった。