老化負債が招く二大疾病
室井 年齢を重ねるにつれて出てくるのが、認知症の問題ですよね。
伊藤 認知症と心不全は、老化負債がもたらす病気の典型例。どちらも人間が長生きするようになってから増えた病気で、負債を返済しにくいのが特徴です。最近では認知症の薬もありますが、治すというより進行を遅らせるもの。そのため早い段階から、認知症にならないよう生活を整えることが大事です。
室井 脳に負債を溜めてしまうのは、どんな習慣なのでしょう。
伊藤 高血圧や高血糖は脳に悪影響を及ぼします。運動する習慣をつけ、アルコールやたばこも控えるべきでしょう。それに加えて、最近注目されているのが《孤独》です。
室井 えっ、孤独?
伊藤 誰とも話さない状態は、脳にとってよくありません。趣味の集まりなどに参加し、誰とでもいいからしゃべったほうがいい。人と話すことのメリットは、意外性があるということ。先ほどリズムを保つことが大事だと言いましたが、時には適度な驚きを持つことも重要。自分の思いどおりにならないこと、予想外のことが起きると、脳は活発に動きますから。
室井 もしや、女優という仕事は脳にいいのかもしれません。「音読が脳に効く」と言いますけど、私たちはナレーションの仕事もしますし、お芝居では、わらじを編みながら方言を話し、さらに感情も表現します。
伊藤 確かにそれはいいですね。
室井 これから先、セリフが覚えられなくなると困るので、私は記憶力を鍛えるために電話番号を暗記するようにしているんです。知人たちの番号を50件は覚えているかな。携帯電話の電話帳機能に登録はしているけれど、記憶から番号を直接入力してかけるようにしています。そうすることで、「今日も頭がしっかり動いているな」と確認できますから。
伊藤 そんな方、なかなかいませんよ! 素晴らしいトレーニングですね。