当時は坂本龍馬も好きだったんです。幕末の混乱の中での志の高さや、常識にとらわれない姿勢に憧れていたんでしょうね。その思いから高知大学を受験して受かったんですけど、困難であればあるほど挑戦したい、みたいな思いがあり、アメリカに留学して映画の勉強をしようと決意を固めました。

東京に行くという選択肢はありませんでした。なぜかアメリカより、東京のほうが遠く感じたんです。不思議ですよね。

ところが、監督コースを志望したつもりが、願書の記入ミスで俳優コースに入ることになり――。英語もよくわかってない状態で演技の勉強をすることになったんです。会話だってままならないのに、芝居なんてできるわけがない。

「シェイクスピアを読んでエッセイを書いてこい」なんて宿題も出ますが、古い英語で書かれているので完全にお手上げです。正直、地獄のような日々でしたね。

授業についていけないので、現実逃避のように、時間を見つけては映画を観ていたんです。でもそのおかげで、いろいろな作品と出合うことになりました。岡山の田舎にはなかったアート作品やカルト作、アングラなものまで、さまざまな映画がある。びっくりしたし、その世界の広大さに心を奪われました。