自分の意志で子どもを産むことを止めている事態

人口減少は止まりません。

このことをきちんと受け止めて、それによって産業や教育や医療がどう変わるのか、きちんとした見通しを立てて、これからこうなりますよと、国民にアナウンスする必要があります。

人口減社会のあり方については、いくつかのシナリオがあり得ます。そのシナリオのうちのどれがよいかについて、国民全体で議論して、合意をかたちづくること、それが必要です。

日本列島に住むすべての人に関わる大問題なんですから。でも、この問題についての国民的な規模の議論が行われていない。メディアは時々思いついたように人口問題について報道しますが、深く掘り下げるということをしていない。

真剣に取り組んでいない。仕方がありません。政治家もメディアも、どうしたらいいのかわからないからです。

政治家やメディアに出てくる「専門家」たちは、「どうしたらいいか私は知っている」ということを前提にして自説を語るわけですけれども、人口減については「どうしたらいいか知っている」という人はどこにもいない。歴史上に事例がないからです。

14世紀から15世紀にかけてヨーロッパではペストが流行りました。この時、世界人口3億8000万人のうち1億人近くが死んだと言われています。

これが唯一の例外的な人口減です。ペストの場合だったら感染症対策で人口減は防げる。というか、感染症対策以外にすることがありません。

でも、今起きている人口減はそれとは違います。人々が自分の意志で子どもを産むことを止めている。これは人類が経験したことのない事態です。

だから、それが何を意味するのかも、それにどう対処したらよいのかも、わからない。この問題と向き合い、それに対して然るべき政策を立てるためには広がりのある想像力と論理的な思考力が必要ですが、現代の日本の政策決定者たちにはそれが欠けています。

 

日本だけの問題ではない(写真提供:Photo AC)