中国や韓国でも同じ問題が…

でも、これは日本だけの話じゃないんです。世界の先進国で同時多発的に起きている。韓国もすでに2年前2019年に人口がピークアウトして、これから急激な人口減、高齢化局面を迎えます。

2060年には日本を抜いて、世界一の高齢社会になる。人口も現在の5200万人から16%減の4400万人になります。韓国の合計特殊出生率は0.72です。少子化が叫ばれている日本でも1.2ですから、驚くべき数字です。

そして、中国です。どうして中国政府が教育政策において、これまでとは全く違う方向に舵を切ったのか。これも人口減が理由ではないかと僕は思っています。

中国は2027年に14億人でピークを迎え、それから急激な人口減少と超高齢化時代を迎えます。

年間500万人ペースで人口が減ります。生産年齢人口、15歳から64歳までの人が2040年までに1億人減り、代わりに65歳以上の人口が3億2500万人にまで増える。

中国は1979年から2014年まで35年間にわたって「一人っ子政策」を実行していましたから、人口構成がひどくいびつになっています。男女比も均等ではありません。

一人っ子では、圧倒的に男性の方が多い。だから、この年齢層の男性たちは配偶者をみつけることが難しくなります。高学歴高収入でないと、なかなか相手が見つからない。

一人っ子の男性で、配偶者がいない人の場合、親が死ぬと、妻も子も兄弟姉妹もいない天涯孤独の身となります。

この人が困窮した場合に、誰が支援するのか。これまでそういう場合のセーフティネットとしては中国社会には親族ネットワークがありました。生活が苦しくなったら、親族を頼ることができた。

でも、一人っ子政策と人口減で、その親族ネットワークそのものがなくなった。中国には日本のような社会福祉制度が整備されていません。

※本稿は『どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと』(草思社)の一部を再編集したものです。

 

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どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと』(著:内田樹/草思社)

「こうすればうまくゆく」という過去の成功体験はこれからは使いものになりません。頭を切り換えないといけない。どうしたら自分の潜在能力を開花させることができるか、どうやったら自分のパフォーマンスを最大化できるか。どうやったら自分の頭がもっと良くなるのかーー。

著者が中高生に向けて「正直かつ親切に」語った講演、寄稿、インタビュー。