薬を2倍飲んでいるかもしれない疑惑

翌日の午後、予約した時間に病院に行くと、すぐに診察室に案内され、私は担当の先生と向かい合って座った。先生は硬い表情で話し始めた。

「お父さんが昨日診察にいらしたのだけれど、今月2回目なんですよ。1ヵ月分の薬を2週間で飲んでしまったそうで。病院としてはすでに30日分出したのに、同じ月にもう一度出すことはできないので、帰ってもらいました」

イメージ(写真提供:Photo AC)

私は予想外の父の行動を聞かされて驚き、慌てて謝った。

「ご迷惑をおかけしてすみません。父が本当に飲んでしまったのか、もしかしたら家の中のどこかに薬をしまってしまったのか、調べてみます」

先生はうなずいてから私に念を押した。

「調べて、あったかなかったか電話で教えてください。ただし、なかったとしても来月にならないと薬は出せないので、ご了承ください。ところで、お父さんが車で診察に来ているのをご存じですか?」

父がまだ車を運転していることはもちろん知っている。年齢的に判断力は低下しているだろうから、大いに問題だと思っている。それなのに運転をやめさせられないでいる状況が恥ずかしくて、うつむいて返事をした。

「はい。知っています」

先生は最初より更に強い口調でおっしゃった。

「運転、やめさせなければ危ないでしょ。免許証を返納させてください」

そう言うと、先生は診察室の窓を指差して、怒気を帯びた声で続けた。

「お父さんはそこに車を停めます。バックするのに手間取って、危なくて見てられないんですよ! 普段の運転、どうなんですか?」

「家で車庫入れをするのは、スムーズにできています」