自由に一人暮らしをしたい父
私の答えが、先生には父を庇っているように聞こえたのだろうか。先生は困惑の表情を浮かべ、矢継ぎ早に私に質問した。
「お父さんは一人暮らし?」「家事は誰がしていますか?」「車を運転してどこに行っていますか?」「久美子さんから運転をやめるように言ったことはないのですか?」
父は自由に一人暮らしをしたいと言っているため、私と同居はしていない。私は通いで掃除や洗濯をして父の生活をサポートしている。父はレタスをちぎって目玉焼きに添えたり、トーストを焼いたりして朝食は自分で作っている。総菜やお弁当をスーパーで買ってきて夕食も一人で食べることが多いと伝えると、先生は私に聞いた。
「スーパーには車で行っているわけですね。それをやめさせなければダメでしょ」
先生がそうおっしゃるのは当然だ。高齢者が事故を起こすことを誰もが懸念しているし、私も重々承知している。
「はい。おっしゃる通りです。父と話し合います。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。薬の件は後程電話でご報告します」