半分残していた赤飯が……

それがである。

折り箱に半分残っていた赤飯を、母が通り掛かった近所のYさんにあげてしまったのだから、さあたいへん。

茶の間からその様子をジッと見ていた父が、夕食時に反撃に出る。

「まだ赤飯残ってたよな。俺、それを食うから」

すべてを承知した上で、父が言った。

『実際に介護した人は葬式では泣かない』(著:こかじさら/双葉社)

「お赤飯なら、私が食べちゃったよ」

母がしれっと嘘をついた。

「俺がもらったものを、何でおめーが食っちゃうんだよ」

父は反撃の手を緩めない。

「別に、いいでしょ」

母のふてぶてしさに勘弁ならぬ、と思ったのか……。父が爆発する。