何が、母をこうした行動に駆り立てるのか
午前9時、和菓子屋さんの開店と同時に電話を掛け、お赤飯があるかどうかを確認する。
「おとうさん、**屋さんのお赤飯買ってきたけど食べる?」
「**屋のか?」
「そうだよ。いま、できたてのを買ってきたから」
いくら高齢でも、昨日の夜から何も食べてないのだから、さすがにお腹が空いていたのだろう。ヒョコヒョコとダイニングルームにやって来ると、
「やっぱりうめえなあ」
できたてのお赤飯を嬉しそうに頬張りはじめる。
「残った分は冷凍しておくから、食べたいときに声を掛けて」
「おー、わかった」
父の機嫌は直ったが……、なぜ母は、父が楽しみにしていた赤飯を人にあげてしまうような行動に出たのかは、謎のままだ。
一事が万事。喧嘩の原因の8割は母が作っているにもかかわらず、同居するまで、母の自己申告を信じて悪者にされていた父に「すまなかった」と、手を合わせる。