高齢者の自己申告には注意が必要です

「日常生活で困ってることは?」

「特に、ねーよ」

『実際に介護した人は葬式では泣かない』(著:こかじさら/双葉社)

あなたたちは困ってなくても、私は困ってます。

どんなに年を取っても、人間というものは人様にはよく思われたいのだろう。特に、介護認定の面接時や主治医の前では、老父母共に物分かりのいい年寄りに変身する。

こうした体面を保とうとする行動は「取り繕い」と言われ、認知症の初期に見られる症状のひとつらしいのだが、本人たちの自己申告通りに介護認定されたら堪ったものではない。

そっちがそう出るなら、こちらにも考えがある。

母の買い物癖が度を越えていて台所がたいへんな状態に陥っていること。何を言っても聞く耳を持たず、すごい勢いで食って掛かってくること。父の激高頻度がこのところ増してきていること。お風呂に入りたがらないこと。二人寄ると触ると下らない喧嘩がはじまることなど……。家での問題行動を箇条書きにし、事前に主治医に届けておく。